第14回日本レックリングハウゼン病学会学術大会 大会長挨拶

 第14回日本レックリングハウゼン病学会学術大会を、2023年2月12日(日)に、名古屋大学医学部附属病院にて開催致します。新型コロナウイルスの感染の安定しない状況、その社会への影響により、日本・世界中の人々が、生命と疾患、自らのライフスタイルに関心を強めている中での開催となります。日本レックリングハウゼン病学会は、レックリングハウゼン病の病因、診断、治療などについて、基礎的及び、臨床的研究の発展と知識の普及、啓発に貢献することを目指す有志が集っています。様々な症候を発症するため皮膚科、小児科、整形外科、脳神経外科、眼科、形成外科、遺伝カウンセラーなど多くの科・職種が総合的に診療することが必要です。そこで、本学術大会では、「学際的診療の浸透:interdisciplinary medical care for NF1 patients」をテーマに掲げました。レックリングハウゼン病患者を単一の科で診ることなく、総合的に多科・多職種で手厚く診療することを全国に浸透させようという思いを込めています。

 レックリングハウゼン病は3,000~3,500人にひとり発症するとされている遺伝性疾患で、厚生労働省行政における指定難病の1つとなっています。カフェオレ斑や皮膚の神経線維腫だけではなく、様々な症候が患者・家族の負担となっています。これまでは対症療法が中心で、病気の原因を制御するような治療薬はありませんでした。しかし、本学会開催前の2022年9月26日にMEK阻害剤であるセルメチニブが、小児レックリングハウゼン病患者で切除不能の症候性叢状神経線維腫に対して国内の製造販売承認を取得しました。顔などの露出部に大きな叢状神経線維腫を有している小児患者等、ADL/QOL障害を背負ってきた患者にとっては大きな朗報であることは間違いないと思います。反面、投与すべき患者、する必要のない患者の区別、有害事象への適切な対応が求められますので、本学会ではこれらの重要な情報も発信したいと考えています。

 第14回学術大会では、基礎と臨床との融合も大切にしようと考えています。招待講演は、米国のChildren’s Tumor FoundationのBoard memberで研究部門長を務めているLu Le教授にお願いしました。Lu Le教授はPhysician-Scientistであり、レックリングハウゼン病における腫瘍形成における微小環境の役割について興味深いお話が聞けることを楽しみにしております。
 
 学会開催日における新型コロナウイルスの感染状況は、現時点では収束傾向にあるといっても予測困難です。しかし、オンラインの長所も取り入れながら、現地、名古屋にもお集まり頂き、可能な範囲ではface-to-faceの直接的な交流と議論を通して、活発な学術大会にしたいと願っております。皆様の積極的な御参加をお待ちしております。

2022年9月

第14回日本レックリングハウゼン病学会学術大会 大会長
名古屋大学医学部附属病院 リハビリテーション科 教授
西田 佳弘

大会長 西田 佳弘